損料屋喜八郎始末控え@山本一力

損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)

損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)

赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)

赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)

深川を舞台に、元武士で今はそんりょうやという小さな商売を営むきはちろうだが、それは表の顔。ほんとの顔は同士と組んでいろんなもめごとを納めるなんでもやさんなのである。今は大恩ある先代のために、金貸しの店のなかでも中規模の「こめや」(米を売ってるわけじゃなくて金貸し)のやや頼りない主人をささえてるよ!与力の秋山さんとは相棒に近いほどの仲良しだよ!深川の料理屋の江戸やの美人女将さんとは好い仲だけど絶対表にださないよ!

な、きはちろうの活躍オムニバスです。きはちろうさんはしぶくてかっこいいのである。

最初は「こめや」が閉店に追い込まれるところは、鮮やかに救う痛快なお話なのですが、そこに出てくる悪者。大店金貸しの伊勢屋や二番目に大きな金貸しの(名前忘れた)。絵にかいたような悪者たちなんですが、だんだんそれに味がでてくるのがいいです。

知恵が回って、大物オーラびしばしで、やり手で、大金持ちであくどい伊勢屋。でも粋人でもあり、彼にも実は大事にしてるものがあったり、彼を慕う人も少ないけど居たりするわけで。一番番頭とのやりとりは、悪だくみではあるんだけど身内の会話って感じでユーモラスです。後半はきはちろうたちの好敵手って感じになるのが楽しい。だんだん伊勢屋がかっこよく思えてくるから不思議です。

あと常にこまったさんなこめやの旦那。あれだけ、きはちろうが注意してるのに、いつも自ら罠にはまってばかり。お・ま・え〜!!的な。でも2巻の「あかえのさくら」の最後の話には、彼の喜びように「あほだー!!」と思いつつ私も大笑いでした。気持はわかる!!しょうがない人ですが、たまには誉められてるし、結局憎めない人です。

話も設定も深いし面白いけど、人々がどんどん色鮮やかにみえてくるようで、大変楽しい小説です。おすすめー。