蝶葬@蘆屋
選択肢がないビジュアルサウンドノベル。分類するとしたら全年齢BL?微妙にそれっぽいのを寺という舞台上の伝統といってしまえばぎりぎり一般向けもありかも。同人フリーゲーム。
寺が舞台なので全員坊主。英信(えいしん)という修行僧を中心に進むストーリー。文章がうまくて、読み始めたらすっと入りこめます。1つの事件が起きて、日常が変わっていく話なのですが、英信を慕う聖や、ライバル視する蓮生や、先輩僧侶たちと人間関係がいろいろなので、さぞやどろどろした話が展開されるかと思ってたら、それぞれの心理描写も抑えがきいた読みやすい文章で、さらりと読めます。まじめによき1作品でした。墨絵調なグラフィックも、雰囲気にとてもあっていて、かっこよいです。
坊主に萌えも苦手もない私が読んで楽しかったので、大丈夫な方はぜひ。短いお話です。ぼーず・らぶは、得意でも苦手でもなく、いや別にBLとして普通にありだよねと思いましたが、マイナーかな。広くお勧めしたいとこですが。
以下萌えとキャラクター話をつらつらと。ネタばれはしてないはず。真面目なお勧め文は上記まで。
英信と蓮生。年少組の修行僧。主人公の英信をライバル視してつっかかるのが蓮生。ふたりの仲悪描写からはじまりますが、実は普通になかよしこよしだよね。雲行きが怪しくなる後半の展開こそ、友情っぷりが映えます。しかし蓮生かわいいな。青年かと思って読み始めましたが、この二人はたぶんまだ少年+αぐらいの年齢かなと思います。
聖。英信を慕う稚児。あの性格とこのポジションはわりをくうよね。読者に嫌われそうですが、聖は聖なりに必死なだけと思うと気の毒とも。
玄親と真如。兄弟子ふたり。英信の兄貴分が玄親で(ここは普通に仲良し)、蓮生のそれが真如(こっちはややセクハラ的な)ですが。兄貴らしく余裕があって楽しいのが玄親で、横で涼しい顔して笑っているのが真如。余裕ありそうに見えるそんな年長者二人の微妙な友情も好きです。あと年少者が「○○兄」と呼ぶのにも萌。かわゆい。
真如兄は一番安定してるけどずいぶんあれな人だなあと。涼しい顔で日常がこなせるけど、興味あることにだけ快楽があるタイプなので、善悪の基準に問題がありそうで、お坊さんとしてはいやだなあ〜。でもある意味いつでも楽しくいられるのは悟ってるといえるのか。違うか。大僧正と玄親が昔から苦笑してるのに納得です。しかしそんな人が、蓮生はだけじゃなく、たぶんあの人のことも愛でてたわけだよねと思うとなんだか落ち着かない気分になります。製作者さんブログで、もしこのゲームがルート分岐ありだったら、真如兄ルートは完全18禁だよねとおっしゃってたのに笑いました。真如兄だけが楽しそうなルートだな。そんな真如兄がけっこう好きです。
これだけ萌え話しといてなんですが、よき一作品でした。きれいにまとまってて好き!二次創作がみたくなる四方向萌えです。ファンが増えるといい。このサイト読んでくださって「まあ面白いと思う気持ちはわからんでもない」と思われた方はぜひ。時間も短いし。ためしに!坊主も悪くないよ!(同士が欲しいです・・)
最後に。本家で公開されてたデカバナー。持ち帰ってつかってくださいとのことなので広報用に。しかしせいいっぱい真面目にかいた紹介が無になりそうな・・・。だいたいあってる↓
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神去なあなあ日常@三浦しをん
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2009/05/15
- メディア: 単行本
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高校卒と同時に林業に就職することを前提の研修制度にほうりこまれでど田舎の神去村(たぶんこれもモデルのある架空の村かと)にやってきた青年の1年間のお話。
興味あったんだろうなという取材結果と三浦しをん風の味付け(おうおうにしてちょっとファンタジーな部分が発生しますがありだと思う)で青年のお話。格闘するものに・・とか風が強く・・・と一緒の心の棚にいれました。18そこそこの青年はもっとぎらぎらしてる気もしますが、彼の心の素朴なつっこみ(ものすごく三浦しをんエッセイ風)が笑えます。後半のイベントが一応クライマックスなんだと思うけど、変なとこで笑ったわー。ファイト一発はひどいよ。お話は小学校高学年からおすすめな柔らかさをもちつつ、私はかなり好きです。
田舎の村ながら、クールで仕事もできてものすごい広大な山をもってるおやかたさんとか、ワイルド過ぎるヨキの30台組もかっこよいながら、おっさんとじいちゃんも飄々としててかっこよいのであった。楽しい一冊。
問題があります@佐野洋子
- 作者: 佐野洋子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/07/11
- メディア: 単行本
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表紙がかわいかったのと題名がおかしかったのとやたら平積みだったので買ってみたエッセイ。「りっぱな犬になるほうほう」の人かと思ってたら人違いでした。読みだして、何者!?と思ったり。(「百万回しんだ猫」を書いた人=すごい昔の名作だとおもっていたら確かに1936年の戦時中の生まれの児童作家さんである)こう、皮肉も面白いな〜、というのと、様々なテーマのエッセイが面白いな興味深いなのエッセイでした。
女性のエッセイについては好き嫌いがばっくり別れるので、冒険しないようにしてる。自分にとっての楽しいことをしきつめて書いてるタイプのは面白ければまあOKなのですが、「私!私!私の生き方!!」てのをむんむん感じるのは苦手なんだ。最も巷のみんなも面白さとはかりにかけて読んでるのだと想像はするけど、私の場合は後者の針がふりきれてるのであんまり・・・。
スポーツ選手とかの自叙伝とかは好きなのにな。佐野さんのエッセイだって十二分に佐野さんの生き方や考え方が伝わってくるわけだけども・・・なんだろ違いは・・・。「主人公、自分!!」的な匂いはしないからかなあ
「私の生き方」ではなくて「自分の視点→テーマ」を押し付けじゃなくて、ウィットにとんだ文章でかいてあるとこが好きなのかな。エッセイの基本ときいたけど(中学の授業で)、それでかつ面白いって、実はとっても難しそう。ああ枕草子が好きって書いてあったけど、それこそが枕草子ということか。
「ふむ。面白いな。私はそんな風に思ったことはないけど、でもへええ!!」とタイプの違う私にも思わせるなんだか面白いエッセイでした。おすすめ。
損料屋喜八郎始末控え@山本一力
- 作者: 山本一力
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/10
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- 作者: 山本一力
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/06/10
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深川を舞台に、元武士で今はそんりょうやという小さな商売を営むきはちろうだが、それは表の顔。ほんとの顔は同士と組んでいろんなもめごとを納めるなんでもやさんなのである。今は大恩ある先代のために、金貸しの店のなかでも中規模の「こめや」(米を売ってるわけじゃなくて金貸し)のやや頼りない主人をささえてるよ!与力の秋山さんとは相棒に近いほどの仲良しだよ!深川の料理屋の江戸やの美人女将さんとは好い仲だけど絶対表にださないよ!
な、きはちろうの活躍オムニバスです。きはちろうさんはしぶくてかっこいいのである。
最初は「こめや」が閉店に追い込まれるところは、鮮やかに救う痛快なお話なのですが、そこに出てくる悪者。大店金貸しの伊勢屋や二番目に大きな金貸しの(名前忘れた)。絵にかいたような悪者たちなんですが、だんだんそれに味がでてくるのがいいです。
知恵が回って、大物オーラびしばしで、やり手で、大金持ちであくどい伊勢屋。でも粋人でもあり、彼にも実は大事にしてるものがあったり、彼を慕う人も少ないけど居たりするわけで。一番番頭とのやりとりは、悪だくみではあるんだけど身内の会話って感じでユーモラスです。後半はきはちろうたちの好敵手って感じになるのが楽しい。だんだん伊勢屋がかっこよく思えてくるから不思議です。
あと常にこまったさんなこめやの旦那。あれだけ、きはちろうが注意してるのに、いつも自ら罠にはまってばかり。お・ま・え〜!!的な。でも2巻の「あかえのさくら」の最後の話には、彼の喜びように「あほだー!!」と思いつつ私も大笑いでした。気持はわかる!!しょうがない人ですが、たまには誉められてるし、結局憎めない人です。
話も設定も深いし面白いけど、人々がどんどん色鮮やかにみえてくるようで、大変楽しい小説です。おすすめー。
雪の女王@藤田貴美
- 作者: 藤田貴美
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2008/04/24
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雪の女王の女王のそりにのっていってしまった大事な幼馴染のカイを探して旅に出たゲルダは、旅の途中で、山賊にさらわれてしまう。しかし山賊の中でも首領に次いで恐れられる山賊の娘がゲルダを欲しがったことで、ゲルダは冬の国で山賊の娘とすごすことになるが・・・。飽きるまでは生かしておいてやるよという山賊の娘とマイペースで物怖じしない純真なゲルダ。
昔読んだ。藤田貴美さんの話はひやひやするので(そこが素敵だとは思うのですが)あれなのですが、これは素直に好きなので新装版かってみた。さっくり残酷かなと思ってたら、最後の王子様然としたところと、薔薇のシーンがちょうすてき!!と思ったなあ。もうひとつの恐ろしくて美しい雪の女王の話。って私はわかりやすくこういうロマンにきゅんきゅんするぜ。
カイとゲルダの話ではなく、ゲルダと山賊の娘の話である。あ、山賊の娘は名前がないのでいつだって「山賊の娘」。雪の女王の完全なパロディなので、原作と比べてにやにやしてほしいという藤田さんのコメントがあったけど、私むかしこれ読んだ直後に原作読みたくなって、原作雪の女王読んで驚いた。原作を大人になって読んだら、ぜんぜん、山賊の娘&ゲルダの話だった。私が読んだのは児童用の絵本だったのに(絵が素敵だったの)そうだもの。最後のシーン(これが最高だと思う)まで一緒だとは思わなかったよ。完璧なパロディで面白いので一緒によむべし。
お気に入りのお話です。
西遊記@平岩弓枝
- 作者: 平岩弓枝
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
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文庫4冊読み終わりました。西遊記って山のように様々な版がでてますが、とてもけなげで愛くるしい西遊記でした。毎日新聞に連載されたものですが、挿絵がまたとってもとても愛くるしい。悟空の絵がほんとうにかわいくて悶絶するぐらい。読書中のひとりごとで「か!かわいいー」と心の声が漏れます。
様々な版の三蔵法師様は、大抵、ツンデレ、というかいい人なんだけどちょっと浅はかなところもあって悟空と気持ちの行き違いやけんかをする、というの多いですよね。でもこちらの三蔵は、ひたすら一生懸命な、慈愛に満ちたよいお師匠様でした。それも新鮮。ごくうを破門するエピソードもあるけど全ては不幸な行き違い。再会してひっしと抱き合うシーンに涙もこぼれます。
悟空がけなげけなげ言われてて、ほんとそのとおりで大変愛くるしく感じました。おしゃかさまやみろくぼさつさまは、目を細めてかわいがってそうな感じ。
1〜2巻でやな奴でありつづけた八戒が気が付くといい奴になっている3〜4巻。気が付かないほどの自然さに驚いた。八戒、昔はイケメンだったんですね・・・。調子に乗って月の姫様(絶世の美女)を口説いたので下天したという・・。八戒も悟浄も白馬の太子にも皆に愛着がでてくるよきお話でした。
久々に清廉な気持ちで楽しく読みました。最後のハッピーエンドにもほろり。めでたしめでたしがこんなにしっくりくるとは。面白かったです。
失はれる物語@乙一
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/06/24
- メディア: 文庫
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短編8編。こちらの方が初期の作品集に近いのかも。人が死ぬことも殺人もあるけれど、さらに切なくあたたかい話風が多いと思う。
王道だ・・!と思いながらまっとうに切なくてぐっときたのが「Calling you」。短編どれも面白い(読書中に夢中)だと思うけど、私は読後にやりとできる「手を握る泥棒の物語」が好きです。ちょっとだめそうな青年が叔母のバックから金を盗もうと旅館による忍び込んで、壁に穴あけて盗み出そうとするんだけど、事態が思わぬ展開に・・・というお話。なんかかわいかった(そればっかりだな)