平面いぬ。@乙一

平面いぬ。 (集英社文庫)

平面いぬ。 (集英社文庫)

分かりやすい面白い小説が読みたいよう!と思ったので、読書中に夢中・ミステリー・後味悪くないの条件を満たしそうな乙一の短編集を買ってみたけど面白かったです。読んでる最中に絶対とめられないという読書も楽しくていいな。

短編4編。その目を見た者は石に変えられてしまうという「石ノ目」の家に迷い込んだ主人公の和製ホラー風な『石ノ目』と、予想外にちょっと切ないけど可愛い話だった「はじめ」と、ぬいぐるみの「BLUE」と、中国人美女の彫師に彫ってもらったワンコの刺青が動き出す「平面いぬ。」

てっきり全部ホラーだと思ってこわごわ読み始めたら、どれもけっこう切なくいい話でした。でも読んでいる最中はいつ残酷な事態が淡々と起きてもおかしくないなーとはらはらします。乙一は昔一度読んだホラー「夏と花火と私の死体」(殺された女の子の死体目線で、それを隠そうとする幼い男の子とその子が好きな幼い女の子の冒険道中がもくもくかかれてて、当然最後に怖いオチ)の印象が強かったので。

私は「平面いぬ。」の、主人公と弟との問答の意味が最後に分かってかわいくあったかくていいなあと思いました。

デビルメイクライ3 スペシャル・エディション

デビル メイ クライ 3 スペシャル エディション PlayStation2 the Best

デビル メイ クライ 3 スペシャル エディション PlayStation2 the Best

スタイリッシュクレイジーアクションというカプコン様らしいジャンル名がついてます。映像がかっこよいストーリー付きのアクション物。お話がつぼにはまったので好きなわけですが、私がはじめてゲームにおいて映像がかっこよくてきれいでよかったなと素直に思えたゲームです。

主人公は物騒で猥雑な街にたった一人で探偵事務所をかまえるダンテ。本業はデビルハンターですが本人は半魔です。ジャンクな食べ物が大好きで、性格が明るく軽く愉快で(でもけっこう熱血)、改造した二挺拳銃できゃっきゃ戦っているところはとても楽しそうでかっこよいです。で、そこに禿げた男が使いでやってきて、お前の双子の兄バージルが塔の上でお前を待っている・・と。で、突然事務所のすぐ脇に、どどどどどっと悪魔の塔が立ち上がり、頂上目指してGO!!

ダンテとバージルの仲悪さと性格の対比ともろもろにぐっときます。ダンテの愉快な性格が大好きです。ひとりステージ最高。バージルの常に眉間にしわよった生真面目さがかわいいなーと思います。Mission19は必見。かっこよすぎて悶えた。

なおレディ(制服姿で巨大な武器を扱う唯一の女の子)は、ほっとけない度が、バージル(ああいうタイプはほっとけない)>ダンテ(ごめん別の意味で心配だ)>レディ(基礎体力は半魔双子よりあるしこのこは大丈夫だ)だっため、ヒロインになってなかった。初対面の男性の眉間を打ち抜くのだけはどうかと思ったけどいい子です。

大笑いして、かっこいい!!と興奮して、それからたまにちょっと切なくなった、楽しいゲーム。大好き。

ぼくらのサイテーな夏@笹生陽子

ぼくらのサイテーの夏 (講談社青い鳥文庫)

ぼくらのサイテーの夏 (講談社青い鳥文庫)

小学6年生の終業式の日、桃井は「階段おち」ゲームで負けた上、骨折。その上夏休みいっぱいのプール掃除の罰を受けてしまう。たった二人でするプール掃除の相手は、ゲームであっさり自分に勝った上大人っぽくてなんだか気に入らないと思ってた栗田。

良かったです。おすすめ。児童文学であることを心の片隅において読んでほしいかな。字は大きめで、あまり長くなくて、ハッピーエンドなのです。児童文学で現代の家族や社会問題をモチーフにしたものって私は正直苦手なのですが(それならじゃんぷ読むよ)、これは面白かったです。ひねてない少年の視点でさくさく見つめてるのがぎりぎり嫌じゃない。

栗田がすごい大人なのと、ぼく「桃井」が普通の少年だけどなんのかんのいってひねてないところが、好対照だと思いました。そんな「ぼく」のほかに、優等生だったけど今ひきこもりがちのアニキや、桃井の小さい妹とかがいて、読後感はとてもさわやかでした。現代の社会問題を深くえぐる!とかいうテーマじゃない以上、私はこういう話のが好きだな。おすすめ。機会があったら読んでみてください。講談社文庫のを買ったのですが、どうせならやまだないとさんの絵で見たいぜ!てことで、画像はそちらを。

以下は良い子じゃない感じの感想。ややネタバレ。すみません!あの、このご本は普通におすすめです。

アニキとのぞみちゃんのセットは大変かわいい。アニキの描写にはてごころありだと思いますが、なんのかんのいってアニキを年上のお兄ちゃんだと捉えてる桃井とつかれたなあといいながらやっぱりいい子なアニキがいいなと思いました。最初にアニキの話になったときに「う、家庭内暴力?」と思ったけど、桃井が弟に絶対手をあげないからアニキは絶対おかしくなってなんかないというのがいいなと。
そして栗田はほんと大人だなあ。大人な私にとっては栗田はいわば一種の理想像なのですが、それをいいなと思う主人公の子もよかったな、面白いなと思いました。そしてこの話のラストシーンは、誰か読んだ人に一緒につっこんで欲しいです。タイトルみたとき、BLぽいタイトルだなあ(すみません)と思いましたが、一応テーマどまんなかなタイトルでした。ベタベタしてないし、ツンデレみたいな分かりやすい心情も、ジャンプみたいなベタな友情もないけど、直球に。

くいもの処 明楽@ヤマシタトモコ

くいもの処 明楽 (マーブルコミックス)

くいもの処 明楽 (マーブルコミックス)

居酒屋『くいもの処 明楽』を舞台にしたバイト青年26歳(生意気年下器用っ子)VS店長32歳(やんちゃ大人・アホ代表イレブン)のあれこれ。表紙がちょうどよく中身を表してる。ときめいた!!大笑いして萌えました。鳥原が明楽をすごく好きになってしまって、そこから猛攻かけたり、ネガティブになったり、という話です。主な視点は明楽さん。明楽さんのあほっぷりとさらりとポジティブっぷりときちんと成長した人なところは確かに惚れるなと思いました。

でも一番は牧さんがかっこいいな!!明楽の幼馴染にして先輩にして上司(オーナー)。ヒドイこと言いながら明楽のことかわいがってるなー昔の思い出が一瞬みえるとことかかなりときめいた(「俺、牧さんに後ろめたいことだけはしないっすよ」というやつ)。明楽が花道なら、牧さんが水戸みたいな感じだろうか?でも友達じゃなくて、近しくて大事なお兄さんて感じだから全然ちがうかも。明楽との問答が大変かわゆいです。牧さんかっこいいなー。見た目大人で落ち着いて賢くて情に厚い○ロ(それは全然○ロではない)。顔の怖い男前です。

友達と牧さんホモだったらいいね☆と語りあってしまいました。この居酒屋、店長・オーナー・キッチンチーフ・ホールチーフの4人が幼馴染なんですが、その設定も素敵。その時の相手はあの30過ぎても警察に連れてかれる喧嘩するホールチーフがいいな(そういう展開はたぶん絶対ない)。

竹光侍@松本大洋(作:永福一成)

竹光侍 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

竹光侍 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

長屋に引っ越してきた若い侍「瀬尾宗一郎」は妙な男だけれども、実はものすごく剣の腕がたつ侍。子供のような野生生物のようなところがある男なのですが、たぶんきっとそれがいけないのか「猫が申しますにはその男血腥いのだそうです」。第一話タイトルがちょうどよく表してると思いました。

松本大洋好きだけど、今回も全然わからなかったらどうしよう・・・とためらっていましたが、とても面白かった。よかった!第一話の見開きカラー大好き。色和紙破いてつくったカラフルな切絵みたいでお気に入りです。そして松本大洋の絵はどんどん象徴的?メルヘン的?になっている気がするのですが(絵の事、なんとなくしか認識できてません)この話にはとてもぴったりでした。私にも話がすごく面白く分かりやすく思えて楽しくて嬉しかったです。

すてきな「マンガ」だと思います。お薦め。原作つきの作品なんですが、お話と絵が離れようもなくぴったりひとつになってる作品てこういうのをいうのかな、と実感しました。松本大洋が描いてなければまた全然ちがう別の作品になるんだろうなーと強く思いました。

余談)『ナンバー吾』も素敵だなあー面白いなあーと思って読んだんだけど、私には意味が全然わからなかったのです。いや私はもともと作品に対して多角的に深く思考してみることが苦手で大抵70%ぐらいしか理解しないままよんでいるのですが、『ナンバー吾』のときは15%ぐらいしか分からなかったので・・・。

ルドルフとイッパイアッテナ

ルドルフとイッパイアッテナ

ルドルフとイッパイアッテナ

黒猫ルドルフは岐阜に住むりえちゃんのかわいい飼い猫(外飼い)。しかし本日魚屋の魚をひったくって逃げてる途中で気絶した場所がトラックの荷台。気絶している間に遠距離トラックで東京に運ばれたルドルフは、右も左も分からない東京の下町で、巨大なトラ猫に出会うのですが・・・。意地張って威勢がいいけどまだ子猫を脱したばかりの少年ルドルフは、その下町のボス猫で、けんかがめちゃ強くてそれでもって『教養』があるでかいトラ猫に出会う。そのトラ猫に名を尋ねたところ、奴はたくさんの人間にかわいがられているんで「俺の名前は『イッパイアッテナ』」。

ルドルフの成長物語。奇特な元飼い主にしこまれてなんと人間の言葉も読めるイッパイアッテナがすんごく賢い猫なのですが、迷子のルドルフに、人生(猫生?)とはなんぞや、教養がある猫がやることはなんぞや、を見せ付ける。かっこいいよな!ルドルフは勝気ですがそれでもイッパイアッテナの背中を見てまた一歩一歩成長します。

強くてかっこいいイッパイアッテナだけど、彼のロマンシズムや稚気が好きです。迷子のルドルフにとっては突然現れたドラえもん並に頼りがいがあり、ドラえもんと比較にならないぐらいに良い兄貴分(ごめんドラえもん・・・)な、クールな大人のイッパイアッテナが見せる人情(猫情?)と、あとほんとは彼が昔の飼い主大好きなところとかが切なく大好きです。

この1冊目は起承転結もめざましくはっきりしてる素敵物語なので、私は大好きです。ルドルフの成長物語。2作目の『ルドルフ ともだち ひとりだち』も面白い上にいい出来だと思うのでおすすめで、私はこの2作目でちびっこながらに切なさという感情を知りました。

小学校3年生の時に本かってあげるといわれて、表紙がかわいくなくてやだよと言ったのにこの本買われてぶーぶーいったのですが、読み出したらルドルフとイッパイアッテナに夢中でした。以来ずっと好きな本です。ちっさいときはひたすらルドルフのつもりで読んでたけど大人になったらイッパイアッテナが大好きだなあと思いました。

ルドルフの悪友というかばか友達として出てくるブッチー(金物屋の猫)も浅はかなれど男前でけっこういい奴です。そげキング的なかっこよさを少々ふりかけた印象です。ヒーローじゃないけど、けっこうやるぜ、みたいな。(あっごめんそげキングはヒーローだったよね)ルドルフとブッチーの砂場での勇姿があほくて好きです。イッパイアッテナはいかつい外見にそぐわず実はガンダムとか仮面ライダー好きな稚気のある大人な気がします。おすすめ!

父の詫び状@向田邦子

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

紹介するまでも無いぐらい有名な向田邦子さんの初エッセイ。脚本家として大変有名な彼女ですが、文章の才能も素晴らしかったという。残念ながら飛行機事故で若くして亡くなられています。『父の詫び状』は彼女の子供の頃の体験や家族(特に父や母)とのあれこれ、就職したての頃の話などをかきつづったエッセイですが、とても読みやすくて雰囲気もよいです。食べ物とか情景がすぐ浮かぶのと、人々のエピソードが(ほろ苦いときもありますが)面白くて、にこにこ読んでしまいます。

私が始めて面白い!と思った子供向けじゃない小説でエッセイでした。小学校6年生の時に母の本棚で見つけて読んだのですが、すごく面白かったので狭い本棚の間でずっとしゃがんで読んだです。当時の塾の先生(おっちゃん)に言ったら「俺の愛読書だ。保存用も持ってる」と熱く語られたのも覚えてます。

最近文庫を自分で買って読んだのですが、色あせることなくすごく面白かったです。12歳の少女が読んでも28歳の女が読んでも面白いってすごいな。向田さんの子供の頃は戦時中だったりして時代が違うわけなのですが、なんかあんまり関係なく面白かったです。子供の頃は黒柳徹子さんの留守電などのエピソードにむちゃくちゃ笑ったのですが、大人になって読むと家族関係のたまに「ほろにがい」という気持ちが分かったり。向田さんのエッセイは他にも数本読みましたが、この父の詫び状が今も一番好きです。

向田邦子さんについてはエッセイを読んでいると『美味しいご飯と、旅行と面白いものが好きな、たまにけっこうおっちょこちょいな方』を想像してましたが、その後関連本や写真集を垣間見たら、黒が似合う細くて綺麗な方でした。『脚本ばりばり書いて、すごく才能あって、すらっとしてたおしゃれな人だけど、環境に反して庶民的な、美味しいご飯大好きな人』か。何が素敵かってご飯への執着が強いとこかな(笑)。YながFみさんといい勝手に親近感わきます。