父の詫び状@向田邦子

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

新装版 父の詫び状 (文春文庫)

紹介するまでも無いぐらい有名な向田邦子さんの初エッセイ。脚本家として大変有名な彼女ですが、文章の才能も素晴らしかったという。残念ながら飛行機事故で若くして亡くなられています。『父の詫び状』は彼女の子供の頃の体験や家族(特に父や母)とのあれこれ、就職したての頃の話などをかきつづったエッセイですが、とても読みやすくて雰囲気もよいです。食べ物とか情景がすぐ浮かぶのと、人々のエピソードが(ほろ苦いときもありますが)面白くて、にこにこ読んでしまいます。

私が始めて面白い!と思った子供向けじゃない小説でエッセイでした。小学校6年生の時に母の本棚で見つけて読んだのですが、すごく面白かったので狭い本棚の間でずっとしゃがんで読んだです。当時の塾の先生(おっちゃん)に言ったら「俺の愛読書だ。保存用も持ってる」と熱く語られたのも覚えてます。

最近文庫を自分で買って読んだのですが、色あせることなくすごく面白かったです。12歳の少女が読んでも28歳の女が読んでも面白いってすごいな。向田さんの子供の頃は戦時中だったりして時代が違うわけなのですが、なんかあんまり関係なく面白かったです。子供の頃は黒柳徹子さんの留守電などのエピソードにむちゃくちゃ笑ったのですが、大人になって読むと家族関係のたまに「ほろにがい」という気持ちが分かったり。向田さんのエッセイは他にも数本読みましたが、この父の詫び状が今も一番好きです。

向田邦子さんについてはエッセイを読んでいると『美味しいご飯と、旅行と面白いものが好きな、たまにけっこうおっちょこちょいな方』を想像してましたが、その後関連本や写真集を垣間見たら、黒が似合う細くて綺麗な方でした。『脚本ばりばり書いて、すごく才能あって、すらっとしてたおしゃれな人だけど、環境に反して庶民的な、美味しいご飯大好きな人』か。何が素敵かってご飯への執着が強いとこかな(笑)。YながFみさんといい勝手に親近感わきます。