マルドゥック・スクランブル@沖方丁

1st 圧縮、2nd 燃焼、3rd 排気 の全3冊のSF。
少女娼婦バロットが、自らの庇護者であるはずの男シェルによって車で爆死させられかけるところから話がスタート。彼女を助けたのは、「マルドゥック・スクランブル0−9」(人命保護を目的とした緊急法令)によって自らの「有益性」を証明しようとするドクターと名乗る男と金色のネズミのウフコックでした。ウフコックは自我も意識もあるネズミ型万能兵器なのですが、唯一、自らの「濫用」はゆるさない。なんでもできてなんでもなれるウフコックだけども、持ち主が彼を濫用した瞬間に、彼は持ち主から乖離するか、さもなきゃ壊れてしまうのでした。

面白いSFでした。後半からのカジノシーンが、一番わくわくして面白かった。ルールとやってることは全くわからないのに、面白いってすごい。

しかしSFって登場人物に感情移入しないや。その距離感が戦闘妖精雪風を思い出させました。バロットも零もけっして嫌いじゃないけど、個人的な思い入れが私には沸かないからかな。純粋に話の面白さでもくもくと読んだ。

私が「おやっ」と気になったのは記憶を捨てて全てをつかもうとしながら、常に忘れたはずの記憶におびえるシェルと、あとはウフコックの元相棒で彼を濫用した敵方のボイルドの回想とか。うーん、感傷大好きっこなんで。ボイルドは最後ふっきっちゃうので私的ロマンはないんだけど。ボイルドにはふっきれたほうが幸だったんだろうなとは思います。あとは、今回のバロットとウフコックの話とは別に、三賢人の一人の弟子であるドクターって、彼は彼で師匠と同じ方向性を信じて証明しようとあがいてる人なんじゃないかなあと思うと興味あります。そしてドクターをああ仕込んだ今は亡き師匠ってどんな人かなとか好奇心はあります。感想からずれた。