風が強く吹いている@三浦しをん
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/21
- メディア: 単行本
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箱根駅伝を舞台に、ハイジと走の走ることをめぐるお話と、周りの仲間の話。銭湯帰りに、万引き逃走中の藤原走に出会った清瀬灰次は、彼を強引に自分の暮らすアパートへ誘う。今時、家賃3万、敷金・礼金0円の竹青荘。住んでいるのは男ばっかの個性溢れる9人の大学生。全員何かしらハイジの世話になっている。走の歓迎会の夜、皆を集めたハイジが宣言したこととは・・?
素人集団で駅伝の最高峰である箱根駅伝を目指すという無茶だけどもさわやかでおかしく好きな話でした。ハイジの強権発動っぷりもおかしかった。
メインのひとつは、ハイジと走の走ることへの思いと葛藤だと思いますが、そのほかの子等の性格や関係性もすごく面白くよかったです。
理工学部の国費留学生で国では送迎車で通ってるのに、いきなり箱根駅伝目指すはめになった、善良なる留学生ムサと、辺境の地出身でやさしく丁寧な「神童」との友情にはいつもほのぼのします。双子のジョージとジョータのイメージは、ハリポタのウィーズリーの赤毛の双子です。あほですがなんでも楽しめるエネルギーが楽しくかっこよく好きです。
私はキングの小ささとそれを自分で分かっているところと最後の駅伝で思っていることが切なく、情けないけどちょっと自分に重ねました。万年思春期ってこういうことかしら。(でもしをんさんは人のそういう面をよく書くし、救いとかはないけど、わりと目線はあたたかいと思うので面白い人だなあと思います。)
意外にいいとこもってったのが司法試験合格生のユキ。ニコチャン先輩とのけんかもツンデレのようでほほえましい(うそです。この小説についてはホモとかそういうのは思ってませんから!)。ユキの走るシーンは痛快で面白いのでにこにこ読めます。でもユキは名前に反して美少年とかではないです。美少年は王子。アパートが決壊しそうなぐらいの漫画蔵書を命よりも大事にする漫画おたく。駅伝に一番苦しんだくちですが、彼のマイペースさはかっこいいの域に入るかと。スポーツなんかにこれっぽっちも興味もない王子が走って最後にハイジにいうセリフとか好きですよ。ニコチャンとキングと王子の年長組は、ハイジと付き合い長くて、彼を人として好いてる分、ハイジへの友情も走る理由にあったろうなと思います。
面白くて感じのよい小説でした。3回も読み返しました。おすすめ。